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明日へのベクトル「創意と工夫が求められている。」マーケティングプランナー 臼井 栄三

2017.4.21
 「吊り橋効果」という理論をご存知だろうか。揺れる吊り橋の上で一緒にいる男女は、恋愛に発展する確率が高くなるというものだ。理由は、吊り橋の上での恐怖のドキドキを、相手への恋心のドキドキと自分の中で勘違いし、実際に恋してしまうかららしい。
 そんなに人間は単純なのか?と思う人もいるかもしれない。しかし、これは実験で確かめられ、心理学の分野では有名な理論の一つになっている。
 要はドキドキすればいいのだから、必ずしも舞台は吊り橋である必要はない。ジェットコースターやお化け屋敷のドキドキでも同じ効果が期待できる。興奮や緊張、恐怖が自己錯覚によって、異性への恋心と結びつく。なかなか興味深い人間の心理だ。
 吊り橋効果を恋愛の世界に限定して受け止める人が多いのだが、人間の心を広く捉えたものと考えてはどうだろう。何かが次のステップに向かうには、まずは心が動くことが重要になる。気持ちが停滞したままでは新しい行動は生まれにくいし、変化も現れない。
 活発になることを忘れてしまったような現在の消費低迷状態は、人びとが「守りの姿勢」を続けていることに原因がある。「将来が不確かな状況なのだから、人びとが守りにまわるのは無理もない」と、消費の低迷を当然視する向きもある。
はたしてそうだろうか。「将来が不確か」というけれど、これまで「将来が確か」な時代などあっただろうか。確かと錯覚していただけではなかっただろうか。
 景気の気は、気持ちの気でもある。人々の心を波立たせ、消費に新しい動きを創るのは広告の役割である。恋愛で吊り橋役をするものは、消費の世界では広告になる。広告人の創意と工夫が、いまほど求められているときはない。

マーケティングプランナー
臼井 栄三