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明日へのベクトル「広告は"道しるべ"でありたい。」マーケティングプランナー 臼井 栄三

2017.10.23
 今年のノーベル経済学賞は、シカゴ大学のリチャード・セイラー教授だった。セイラー教授は行動経済学の第一人者だ。行動経済学は心理学を経済学に応用していて、それだけ私たちが関わるマーケティングや広告に近いアプローチが目立つ。
 従来の伝統的な経済学では、人間は最も合理的な選択や行動をとるという前提に立つ。ある人が過酷なアルバイトを続けて得た10万円と、ギャンブルで得た10万円を考えてみよう。伝統的な経済学では、同じ10万円なのだからその使い方は同じ、ということになる。
そうだろうか? 厳しいアルバイトで得たおカネは、ギャンブルで得たおカネよりも、もっと熟慮した使い方を多くの人がするのではないだろうか。そんな人間の心理や非合理性に着目した行動経済学は、2000年代に入って広く注目されてきた。
 広告に携わると、人びとへのインサイトの重要性を痛感する。企業が予め意図したとおりには消費者はモノを買わないし、動かないことが多い。消費者は心の中で本当は何を感じ、何を思うのか、深い洞察が欠かせない。消費者目線からの商品のあり方や販売方法、価格、広告などの見直しが欠かせないのだ。そんな環境の中で、私たちは行動経済学のエッセンスも自分のものとしておきたい。
 私たちの周りを見ても、人びとの在宅時間は減少し、働き方は多様になり、お一人様市場が大きくなり、高齢者が目立って増えている。人びとの生活様式は変化し、商品やサービスも多様化して私たちの選択肢は驚くほど増加している。それは良いことばかりではない。それだけ複雑化して、消費者は何が最も賢明な選択なのか、迷い、不安を感じているのも事実なのだ。
 複雑化する現代に、広告は賢い選択へと人びとを導く道しるべでありたい。広告の基本的な役割を、いま私たちは再確認したい。

マーケティングプランナー
臼井 栄三