『明日へのベクトル』 「外からの目」が、共感を呼ぶ。 マーケティングプランナー 臼井 栄三



大好きな言葉がある。When you’re not the biggest, you have to.

(最大最強でないのなら、頑張らなきゃいけないのさ。)今から60年前の、エイビスレンタカーの広告コピーの一節である。you have toの後に、try harderが省略されている。

1960年代初頭のアメリカ。レンタカー業界第2位のエイビスは、1位のハーツに大きく差をつけられていた。エイビスの従業員は精彩に欠け、サービスはお世辞にもいいとは言えなかった。

伝説になっているエイビスの広告キャンペーンは、そんな逆境からスタートした。広告会社DDBはキャンペーンを立案するために、3カ月間エイビスの社内を調査・取材したという。

「エイビスはレンタカー業界でただの2位にすぎません。エイビスに乗るなんて…」のキャッチフレーズを初めとしてとして、自社の短所も告白的に取り上げる広告シリーズは大きな反響を呼んだ。実際、エイビスで借りた車にタバコの吸い殻が多数残っていたこともコピーは伝えた。広告は、社員の意識改革にも火をつけたのだ。

「私たちは2位です。だから、もっと頑張ります(We try harder)。」“We try harder”は当時のアメリカの流行語になり、それが書かれたバッジは売れに売れたという。エイビスは2年間でシェアを28%も伸ばす。それだけこのフレーズは生活者の共感を呼んだのだ。

1960年代という経済成長期だから成し得たという指摘もできるだろう。しかし、広告会社の「外からの目」が広告主の社員を奮い立たせたのも事実である。真摯な提案は、社会的共鳴を生む。

あなたは広告主の気に入るような提案ばかりをしていないだろうか?あなたの提案は、本当に広告主そして社会のためになっているだろうか。このキャンペーンが最初に提案されたとき、エイビスの役員会では大多数がこの案に反対だったことを付け加えておこう。



マーケティングプランナー

臼井 栄三