『明日へのベクトル(連載127)』 AIを超えた存在になろう。 マーケティングプランナー 臼井 栄三



 少しでもマーケティングに向き合った人なら「マーケティングの4P」をご存知だろう。4つのPはProduct(商品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販売促進)を指す。

 具体的なマーケティング戦略は、4Pに含まれる要素の組み合わせから生まれる。これがマーケティング・ミックスの考え方だ。

 近年では中東情勢をはじめとして、国際的に不安定な状況が4Pにも大きな影響を与えている。Productの不足や需給ひっ迫、Priceの高騰、Placeでは物流の混乱、Promotionには新しい手法が次々に生まれている。

 円安や原料不足などにより、国内ではインフレーションの黄色信号が灯っている。消費者は価格に敏感になり、生活防衛的な動きも見られる。Price環境の今後の動向に目が離せない。

 興味深いのは最近のダイナミック・プライシング(動的価格設定)の傾向だ。商品やサービスの価格を、需要と供給の増減に合わせて柔軟に変動させる例が増えている。

 ホテルや航空業界では以前から導入されているが、その裾野はどんどん広がっている。最近はコンサートのチケット販売でも、売れ行きを過去のデータと照らし合わせてAIが価格を決めることもある。またスポーツ観戦では、人気によって一つ一つの座席に異なった価格をつけることもある。家電量販店でもAIが決めた価格を瞬時に店頭で反映させる例もある。その他にも高速道路やテーマパーク、駐車場などダイナミック・プライシングは広がる一方だ。

 大切なことは、このような企業の価格戦略が消費者の納得を広く得られるかだろう。新価格体系が消費者心理を逆撫でし、思わぬ反感を買うケースも出てきている。消費者心理に精通している広告会社は、価格戦略でもクライアントに適切なアドバイスをすることが求められる。私たちはAIを超えた存在にならなければならない。



マーケティングプランナー

臼井 栄三