『明日へのベクトル』 その提案は、社会の役に立つ内容だろうか。 マーケティングプランナー 臼井 栄三



志望企業に就職が決まった学生と話をした。エントリーする企業選びの段階で、学生はSDGsを判断の目安にしたと言う。就職するということは、その企業で長く働くことだから、長い目で企業を捉えなければならない。SDGsはその企業が、社会や環境に役立つ存在であり続けられるかを計る物差しになったようだ。
たしかに、SDGsが掲げる17の行動目標に沿った事業活動を、その企業が行っているかどうかは判断の重要な視点だ。広告会社も企画を提案するときには、ぜひSDGsをメインにした企画を用意してほしい。もし企画がSDGsに何も関係しない内容なら、その提案は再検討されるべきだろう。それほど私たちの社会は、そして世界は安心できる状態で存続できるのか危機に直面している。
SDGsを中心に据えた企画で、僕が真っ先に思い出すのは2018年のカンヌライオンズだ。この年に、カンヌライオンズはSDGs部門を新設。部門のグランプリは、オーストラリアのコミュニケーションエージェンシーが企画した「パラオ・プレッジ(誓約)」だった。 
太平洋に浮かぶ島からなるパラオ共和国の人口は約1.8万人。年間に人口の10倍近い観光客が訪れる。旅行者がパラオに入国するとき、パスポートに「パラオ・プレッジ」のスタンプが捺される。スタンプには「パラオの皆さん、私は客人として、皆さんの美しくユニークな島を保存し保護することを誓います。(以下略)」で始まる誓いの言葉が並んでいる。観光客は誓約に署名が求められる。
「パラオ・プレッジ」は世界で初めての、旅行者一人一人が参加する環境保護誓約だ。このような提案が、私たちと同じような仕事に携わっているメンバーから生まれている。そこに、大きな可能性と希望を感じる。モノやサービスを売るためだけの広告から、良いコミュニケーションへ。私たちのビジネスは鮮やかに変化していく。

マーケティングプランナー

臼井 栄三