『明日へのベクトル』 恋愛型競争のお助け人に。 マーケティングプランナー 臼井 栄三



仕事をしていて、もしあなたがターゲットやキャンペーンという言葉を自然に使っているとしたら、一度立ち止まって考えたほうがいいかもしれない。たとえば、ターゲットとは本当は何だろう?と。
どのようなタイプの消費者を顧客にしたいのか。ターゲットとは「標的」である。もともとこの言葉は、主として軍事用語として使われていた。戦争で狙うべき場所や敵を表わしていたわけだ。
たしかに企業は連日、激しい競争をしている。企業間競争を「生き残りをかけた戦い」という人もいる。ライバル企業と市場シェアを奪い合う戦争をしている、という捉え方だ。
しかし、もし顧客を大切に考えるなら、顧客を「標的」と捉えるのには疑問が生じる。顧客に銃を向けるのではなく、顧客という人間の気持ち(心)の中のシェアを高めるのが、本当のあり方ではないだろうか。消費者を理解し、顧客に寄り添い、いつも顧客のためを考える。顧客の心の中で、企業や商品の存在感が大きくなるように努めるのが第一になるはずだ。言ってみれば、顧客との「恋愛型」のビジネスが本来のあり方になっていい。
恋愛型の競争では、顧客はターゲットではなくパートナーになる。キャンペーンで強引に売り込むのではなく、顧客とのリレーションシップ(関係性)を深めることが重要になる。戦争型の競争ならライバル社の強み・弱みを分析するが、恋愛型の競争ではなによりも顧客の幸福感や希望を叶えることが真っ先にくる。
肝要なのはライバルとの激しい戦争に注力することではない。顧客を優しく見つめ、価値観を共有することなのだ。こんなフレームを、慶応義塾大学・嶋口充輝名誉教授は20年以上前に提案している。
私たち広告人の仕事は、戦争型ビジネスに加担するのではなく、実は恋愛型なのだと思うと、仕事はより魅力にあふれ、夢に満ちたものにならないだろうか。そう、あなたは恋愛成就お助け人なのだ。

マーケティングプランナー
臼井 栄三