『明日へのベクトル』 現状に縛られない発想を。 マーケティングプランナー 臼井 栄三
ある企業の経営者(S氏としておく)から、ときどき相談を受ける。最近では組織改革やDXの推進、新事業開発などの話が多い。
多くの経営者がそうであるように、S氏も自社の現状を見つめ、分析しながら、それを改善していくことで次の時代に対応しようとしている。S氏の場合はこれまでの実績や成功体験が、意思決定に大きな影響を与えているようだ。その思考のしかたが、僕に「S氏の会社は今後生き残っていけるのだろうか?」と疑問を抱かせた。
過去の成功体験や実績、データなどに基づき、現状を改善していくことで事態の打開を図るやり方は、いまの時代、はたして本当に有効だろうか。コロナ禍やDX、ESG重視、企業環境の激変など、私たちは極めて大きな環境変化の荒波の中にいる。現代のように先が不透明なときに、現状を起点としてその延長線上で次の時代を捉えることは大きな誤りをおかしかねない。
現状分析を積み重ねて、そこから次のステップに向かうやり方をフォアキャストと呼ぶ。フォアキャストの思考では、思い切った革新的な事業も生まれにくいし、イノベーションも起こりにくい。
これに対して、バックキャストの思考法は将来の目標となる状態を想定し、そこから現在に立ち戻って「やるべきこと」を考える。経営環境が不透明で変化が著しい時代には、理想とする将来像をまずはっきり描くことが大切だ。それを描き切れれば、向かっていくべき目標が明確になり、創造的に取り組めることになる。
過去や現在からではなく、望ましい未来から発想することで新しいアプローチが生まれる。これまでのやり方や向き合い方では真の解決策が見つからないことも多くなっている。現状に縛られることなく、未来からの発想法であるバックキャストを取り入れることで、課題を解決していってほしい。
マーケティングプランナー
臼井 栄三