『明日へのベクトル』 街はヒントに満ちている。 マーケティングプランナー 臼井 栄三



街でよく見かける宝くじ売場。どれくらい売れているか調べてみると、近年は売上げが減っている。宝くじの売上げがピークだったのは2005年度で、1兆1,047億円だ。それから減少傾向が続き、昨年度は8,133億円だった。ピークのときより26%減っている。

若い人に話を聞いてみると、宝くじはコストパフォーマンスが悪いと言う。一昔前までは、宝くじは「夢を買う」ものだった。たとえば年末ジャンボは、一年の締めくくりに大きな夢を楽しむ一種の個人的なイベントのようなものだった。コスパで宝くじを捉える人は少なかったように思う。

しかし、今の若い人はお金に対して見方がクールである。宝くじの売上げに対する当選金の割合は47%だ。売上げの半分も当選金にあてられていないのは、コスパが悪いと捉えられても仕方がない。 

大人になってから経済の高成長やバブル期を経験したことがない50歳以下の世代は、全体的に堅実で「大当たり」など期待しない。1990年代中盤以降に生まれたZ世代になると、その傾向はいっそう強くなる。2019年に行われた日本宝くじ協会の世論調査で、宝くじの購入者の41%が60代以上なのも、これを裏付けている。

広告に携わった経験を持つ人間の習性として、宝くじの売上げ減少をストップさせる方法はないか、つい考えてしまう。宝くじの将来像を思い描くなら、Z世代を含む30代以下の若い人たちに受け入れられることが必要だろう。この世代は社会に役立つ取組みに共感する割合が、年長の世代よりも高い。宝くじを買うことが、広く社会の役に立つという面をアピールすべきではないだろうか。

「億万長者への通り道」と看板が出ている宝くじ売場を見て、違和感を覚える。街の宝くじ売場はほんの一例に過ぎない。広告人の知恵や提案を待っているものは、世の中にとても多いと感じている。



マーケティングプランナー

臼井 栄三