『明日へのベクトル(連載110)』 「生きもの視点」から発想したい。 マーケティングプランナー 臼井 栄三
全国に1700余ある市町村で、小学校の時間割の中に「農業科」を組み入れ、授業を行なっている自治体が二つある。一つは福島県喜多方市で、もう一つは北海道の美唄市だ。美唄市の小学校における「農業科」のスタートは2023年、つまり今年である。
できたばかりの『美唄市小学校農業科読本』を開いてみた。第Ⅰ章に「あなたが生きものであることを学ぶ農業」と題して、生命誌研究者・中村桂子さんのメッセージが載っている。このメッセージ、わかりやすく平易な文章でありながら内容がとても深く、人間として何を大切にしたらいいのか、その本質を語りかけている。
――地球上にいる生きものは、すべて共通の祖先細胞から生まれた。約40億年前の海の中には祖先細胞が存在して、あらゆる生きものはそれから始まっている。地球上のどんな動植物、もちろん人間も、同じ祖先から進化してきた仲間である。人間を含むすべての生きものはつながった仲間であり、みんなが支え合いながら生きていくことがなによりも大切――
上記のような内容がやさしく説かれ、「生きものとして生きることを楽しみましょう」と子どもたちに呼びかけている。生きものを相手にし、生きものとの関係を大事にして、生命に感謝しながら心を育んでいくのが農業ということに、あらためて気づかされる。
「農業科」を学ぶ美唄市の子どもたちは、自分たちで作物を育てながら、生きものと向き合い、生命を感じ、考えていく。このような取り組みが、もし北海道の全部の小学校に広がったら、将来の北海道は大きく変わるのではないだろうか。
私たちは実に多くの、さまざまな生きものに支えられて生きている。この根源的な「生きもの視点」から発想することで、現代が直面する課題の多くに解決の糸口が見つかる気がしてならない。
マーケティングプランナー
臼井 栄三