『明日へのベクトル(連載114)』 消費者へ、ベネフィットを明確に伝えていきたい。 マーケティングプランナー 臼井 栄三



「ジャムの法則」というマーケティングで有名な法則がある。

人は選択肢が増えると、選ぶことを難しく感じるようになり、選択すること自体をやめてしまうことがあるという法則だ。

今から30年ほど前、コロンビア大学のアイエンガー教授がこの法則を発表した。スーパーの店頭でジャムの試食販売を行う実験によって導き出されたので、「ジャムの法則」と呼ばれる。

6種類のジャムを並べて試食販売した週と、24種類のジャムを並べて試食販売した週を比較。店頭でどちらが多く売れるかを調べる実験だった。結果は、試食した人数では24種類のジャムのほうが1.5倍の客を呼んだ。しかし購入率では、6種類のジャムを置いた週のほうが24種類を置いた週より何倍も高かった。

導き出されたのは、人は選択肢が多すぎると一つを選ぶのが難しくなり、選ぶ行為自体をやめることもあるという結論だった。いまではこの法則は、さまざまな商品やサービスの販売などで活かされている。選択するものの種類を多くするのは親切なようであるが、実は顧客側の心理的な負担を大きくし、顧客は買うのをやめてしまうこともあるわけだ。

そんなところから「ジャムの法則」は「決定回避の法則」とも呼ばれる。選択肢が多すぎる例は、ネットショッピングでもよく見かける。ここ何年も消費が伸び悩んでいるのは、商品やサービスの選択肢が多すぎるのも一因かもしれない。

広告は商品やサービスのセリングポイントを明快に示し、人びとが受けるベネフィット(恩恵・便益)をはっきりと伝える。広告が本来の機能を発揮するなら、消費者の中に「決定回避の法則」が入り込む余地はなくなる。広告人は今こそ広告本来の役割を心に留め、商品やサービスのベネフィットを明確に伝えていくべきだろう。消費を上向きにできるかは、広告にかかっていると思う。



マーケティングプランナー

臼井 栄三