『明日へのベクトル(連載115)』 ダイバーシティは、広告のテーマでもある。 マーケティングプランナー 臼井 栄三
近年、企業経営のキーワードのように用いられているダイバーシティ。「多様性」と訳されているが、この三文字では本当の意味をなかなか伝えきれないと感じている。
ダイバーシティの考え方は、もともとは1960年前後にアメリカで広がった。発端はマイノリティや女性たちが差別を受けない採用や処遇を求める運動であった。やがて年齢や性別、人種、国籍、障がい、容姿などの多様な属性を持った人たちが、社会の中で共存するありようを指すようになった。
今日ではダイバーシティの概念が、外から判断しにくい内面的な属性へと広がっている。例えば職務経験、性的指向、宗教、価値観、趣味、ライフスタイルなど、まさに多様な属性を含んでいる。
さて、マーケティング活動や広告表現の分野では、どれだけダイバーシティに踏み込んだ展開がなされているだろうか。進んだ例として、自動車会社スバルのアメリカでの企業活動や広告展開が、一つの参考になるかもしれない。
スバルは1996年からLGBTQ市場をにらんだ広告を打ち始める。2000年には、世界的なテニスプレーヤーのナブラチロワを起用したCMが好評を博する。ナブラチロワと言えば、レズビアン・コミュニティの代表的なスポークスパーソンである。もちろん広告表現だけでなく、スバルは社内でLGBTQの社員の福利厚生に取り組み、社会では長年にわたってレインボープライドを支援している。
ともすればセンシティブな問題として、広告表現で避けられがちになるのが性的指向や性自認だ。しかしダイバーシティとインクルージョン(包括、認め合い)は社会に必要不可欠であり、そこに踏み込んだ展開はもっとなされていいのではないだろうか。広告は常に広い視野からのアプローチが大切と思うからだ。
マーケティングプランナー
臼井 栄三