『明日へのベクトル(連載116)』 広告アプローチのあり方を、もっと考えたい。 マーケティングプランナー 臼井 栄三
テレビや新聞紙上に自分が買った車の広告が現れると、つい熱心に見てしまう。そんな経験はないだろうか。
ある商品の広告を最も関心を持って見る人は、その商品を購入した消費者だという。とくに住宅や車などの高額商品になると、その傾向は強くなるようだ。自分の経験と照らし合わせても、たしかに思い当たることが多々ある。どうしてそうなるのだろう。
人は無意識のうちに、自分のとった行動や判断を正当化し、自身を納得させようとする。認知心理学や社会心理学の分野で「確証バイアス」と呼ばれるものだ。人は自分の意見や願望を支持したり強化したりする情報を、自ら求めるような心理になる。
広告は、その商品を買ってくれる人を増やすために出されることが多い。当然ながら広告ターゲットは、近い将来購入する可能性がある見込み客ということになる。すでに購入した人をメインの訴求層にはしていないようだ。
しかし、熱心に広告に触れる人たちが既存の購入者であるのなら、その人たちに照準を合わせる広告アプローチも考えられるのではないだろうか。広告によって既存の購入者の判断や行動を積極的に認め、商品選択が賢明な選択だったと後押しする。購入者は自信をもって、今度はその商品を友人や知人に推奨するだろう。
SNSをはじめとして、クチコミ全盛の時代だ。自分の商品選択に確信を持った購入者は、喜んで商品情報を伝えてくれるはずだ。広告は、クチコミによる情報伝達の触媒役になればいい。
マーケティングコミュニケーションにおいて、どうしたらクチコミの威力を最大化できるか。コミュニケーション設計で最も考えたいテーマだ。広告がどれだけ力を発揮できるかが試されている。
マーケティングプランナー
臼井 栄三