『明日へのベクトル(連載117)』 人間とお金の関係を、あらためて考えたい。 マーケティングプランナー 臼井 栄三



お金というものは、いろいろな性格を持っている。正確に言えば、お金に対する人間の向き合い方や受け止め方は実にさまざまだ。

当然なことだが、お金には価値がある。人はビジネスでお金を得るし、私たちの生活はお金によって維持されている。

しかし、お金によって人の行動を左右しようとすると、逆に作用することもある。お金が間に入ることによって、ねらいとは別の方向に人間が動いてしまうのだ。

例をあげよう。ある保育園で、決められた時刻までに子どもを迎えに来ない数人の保護者がいた。保育園は決められた時刻までに迎えに来てもらおうと、遅刻した保護者に罰金を科す決まりを設けた。

その結果、お迎えに遅刻する保護者が目立って増えてしまった。罰金が逆に働いたのだ。保護者は罰金を、保育時間終了後も子どもを預かってもらうための対価ととらえたのである。

罰金が導入されるまでは、保護者たちは内発的に迎えの時刻を守ろうとした。遅刻は、保護者たちの心の中に一種の罪悪感を生んでいたのだろう。それがお金に置き換わることによって、自発的に行動する意欲を失ってしまった。お金が人の意欲を削ぐこともある。

似たようなケースは、ボランティアに取り組む人にも見られる。ボランティアは誰かのために役立とうとすることがモチベーションになっている。報酬を払おうとすると、気分を害する人もいる。人間の心の中にある利他性が否定される気持ちになるのだろう。

また一方では、同じ行動でも報酬を前提とすると、人はまず損得を考えるようになる。

一筋縄ではいかない、人間とお金の関係。私たちがじっくり考えてもいいテーマだ。 



マーケティングプランナー

臼井 栄三