『明日へのベクトル(連載121)』 何度も会う意味を軽視してはならない。 マーケティングプランナー 臼井 栄三
はじめて会ったとき、取っつきにくいと感じた人がいる。しかし何回か会っているうちに、その人に親しみを覚えてくる――。そんな経験はないだろうか。
あるいはこんなケースはないだろうか。近所の学校から流れてくる校歌を、最初はあまりいい曲と思わなかった。けれど何度も耳にするうちに、その校歌に好感を抱くようになっていた――。
ある対象を目にしたり耳にしたりすることを繰り返すと、その対象に抱く印象や評価が向上することが知られている。アメリカの心理学者ロバート・ザイオンス(1923年~2008年)が提唱し、後に多くの研究者が実験によってこの効果を確認している。
好感度や印象度がアップするのは、会う人や音楽などにとどまらない。写真や絵、匂い、味覚などでもザイオンス効果が現れる。
日々の生活で言えば、テレビCMや店内のBGMを何度も見たり聞いたりしているうちに、自然になじんでしまうのもザイオンス効果だろう。広告を繰り返し露出することは、商品やブランドへの好感度を高めることにつながっている。
仕事面で言えば、営業担当者が何度もクライアントを訪問することは、クライアントからの好意を醸成することになる。
私たちの周りを見ると、とくにコロナ禍以降emailをはじめとしたデジタルツールが多く使われている。スピーディで効率的だからといって、デジタルに頼りすぎてクライアントとあまり会わないのは危険な場合もある。別の会社の誰かが何度もそのクライアントを訪問し、接触を繰り返すことで興味や好感を持たれるかもしれない。
どんなにデジタル化が進んでも、実際に会って表情を確かめながら話す以上のコミュニケーションはない。DXと人間の心理とのバランスをどう保っていくか。私たちの対応力が試されている。
マーケティングプランナー
臼井 栄三