明日へのベクトル「これから」の視点こそが生命線だ。 マーケティングプランナー 臼井 栄三


僕が授業を行なっている大学の新学科から、この春初めて卒業生が旅立った。なにしろ新学科の中で、「芸術・スポーツビジネス」という全国でも珍しい分野に取り組んだ新しい専攻だ。卒業生がどんな企業に就職していくのか、とても気になっていた。
結果は、それぞれが自分に合う(と感じた)企業を見つけられたようだが、彼らは就活からいろいろなことを感じ取っていた。卒業生が異口同音に指摘していたのは、企業の保守性だ。
企業の採用担当者はこれまでの業務実績や企業活動を話すばかりで、「これから」の企業の姿をほとんど語ってくれなかったという。学生にとっては、その企業が「これから」何を目指し、それに向かってどう取り組んでいくのかが、最も知りたいことだ。自分が社員になって関わるのは「これから」の活動なのに、多くの採用担当者は「これまで」しか語ってくれない。学生がギャップを感じるのは、尤もなことだと思う。
企業にしてみれば、自社に合う人材を採用したいと考えるのは当然だろう。問題はその「自社に合う」人材が、「これまでの自社に合う」人材なのか、「これからの自社に合う」人材なのかだ。企業はそこを明確にしなければならない。
時代とともに、社会も人びとの価値観も大きく変化している。人材採用面で、「これまで」だけを基準にしていたら企業は大きく遅れを取ってしまうだろう。
新しい専攻から飛び立った学生たちは、次の時代を見据えながら4年間の大学生生活を送った。そんな彼らが現実の企業の中で、どう自分の力を発揮していけるか。「これまで」の価値観ばかりに影響されず、「これから」の座標軸を忘れずに仕事に向き合ってほしい。
同時に企業活動には、その視野の中にいつも「明日」が入っていてほしい。とくに半歩先、一歩先の時代を提示する広告業界においては、「これから」の視点こそが生命線なのだから。

マーケティングプランナー
臼井 栄三