東急エージェンシー 北海道支社 コピーライター 鎌塚慎平 「個人的な趣味と信仰のハナシ。」

広告づくりを仕事にして7年くらい経ちました。コピーライターとして、いまは3社目。はじめた頃と比較して、自分にできることもそれなりに増えましたが、それよりもはるかに増えたのは関わる人の数です。広告はひとりではつくれない。
ぼくは趣味で演劇をつくっています。そちらはもう、かれこれ十数年。脚本を書いて、俳優とスタッフといっしょに稽古して、劇場でお客さんに観てもらう。演劇もおなじで、ひとりでは成立しない。
チームでものづくりを進めるうえで大切になるのは、それぞれが感じていることを理解し合うこと。「言語化」という言葉がはやりましたが、この力が相互理解を進めてくれます。共有できない感情を、説明できる言葉へ変換する力。
引き続き趣味のハナシで恐縮ですが、演劇をつくっているとたまに「非言語」や「非論理」を押し通そうとする、無意識のようなものを感じることがあります。「言葉にできないから良いんだよ」という美意識が、「言葉にする」ことを拒否する圧力になっているような気がするのです。
この非言語信仰は、ぼくがいる界隈特有の空気なのかもしれませんし、ぼくの周りの劇団員がロマンチストなだけかもしれませんし、ぼくの思い込みかもしれませんから、これは個人的な愚痴ということになりますが。ぼくはこの空気に抗いたいと思っています。「せっかくヒトなんだから、伝えていこうよ~」くらいのゆるさで。
すべてのことがらを言葉にできるとは思いません。また、言葉にできない領域にこそ、ひとの心をゆさぶる可能性があるとも思います。でも、「言葉にできない」と、「言葉にしない」は少し違いますから、やっぱりこれからも感じたことは言葉にしていきたい。
どんどん言葉にして、どんどん伝えて、その先にやがてたどり着くどうしても言葉にできなかったこと。そこには、その人にとって、あるいはチームにとって、あるいは世の中にとって新しい発見があると思うのです。この新しい「言葉にできない」はとても美しく、力強く、人を動かす力があると信じている。つまり、非言語信仰のロマンチストはぼくでしたという。
ちなみに誰かの「言葉にできない」を、あざやかに(実際は必死に、遮二無二、不安になりながら)言葉にするのがコピーライターで、あざやかに(実際は必死に、遮二無二、不安になりながら)演劇にするのが演出家なんだと思いますが、ぼくはどっちもできている気がしません。生涯「しろうと」の気持ちで、チャレンジを続けていきます。みなさま、これからもどうぞよろしくお願いします。
