『明日へのベクトル(連載126)』 地域の変化を示すもの。 マーケティングプランナー 臼井 栄三
国や地域に住む人々の分布状況から、その国や地域の人口の重心を求めることができる。この「人口重心」を知ることで、興味深い傾向が見えてくることも多い。
たとえばアメリカ合衆国の人口重心は、1800年には東部のメリーランド州にあった。その後ヴァージニア州、オハイオ州、ケンタッキー州などを経て、1900年にはインディアナ州へと移っている。人口重心の移動はさらに続き、イリノイ州を経て現在はミズーリ州にある。約200年間でこれだけ西進したのは、アメリカ社会の変化が極めてダイナミックなものであったことを示している。
アメリカほどではないが、東京都でも人口重心の移動は見られる。約70年前の1955年、東京都の人口重心は渋谷区明治神宮にあった。その後は多摩地区などに住む人が増えて、今は杉並区松ノ木一丁目が人口重心である。JR路線で言えば中央線の高円寺駅近くだ。
地域の人口には必ず増減がある。人口重心が移動するなら、その方向に地域の勢いや賑わいも移っていくと考えられる。
2020年時点で、北海道の人口重心は空知管内の栗山町にある。5年前の2015年よりも西南西に992メートル移動した。この5年間の移動距離は全国の都道府県で最大だ。それだけ北海道の人口移動が大きいことが示されている。札幌圏の勢いが依然として続いていると考えることもできるかもしれない。
しかし、その札幌も最近は少しずつ人口が減少している。北海道の人口重心の大きな移動距離は、札幌圏以外の地域の急激な人口減少のためと考える方が正しいだろう。地域の過疎化が急ピッチで進んでいるので、人口重心が大きく動いているわけだ。
北海道はこれからどうなっていくのだろう。人口重心のある栗山町で、田園風景を眺めながら考えるのもいいかもしれない。
マーケティングプランナー
臼井 栄三